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「ゴジラ」2016

劇団離風霊船「ゴジラ」

 5月29日、下北沢「スズナリ」にて。




 劇団離風霊船が「ゴジラ」を再演。初演からそろそろ30年にもなろうという息の長い作品だ。かく言う僕も「ゴジラ」でリブレに出会った。尤も、厳密には初演ではない。スズナリでの初演の時「ぴあ」でこのタイトルを見かけ気にはなったのだがわざわざは出かけなかった。しかし同年すぐ(恐らく数ヵ月後ぐらい)に新宿タイニイアリスで再演の情報を観て、何故か「これは観に行かねば」という思いに駆られた。
 衝撃を受けた。舞台の大仕掛けも勿論だが、何より音に。そしてその音がたまたまだったのか、会場に恵まれたのか、確かめるため次の公演(別の会場)にも行った。そこで確信を得て音響さんにお目通りを願った。そしてリブレ通いが始まった。「音響に花束を持ってくる変な客」という事で劇団内でもちょっと有名だったそうだ(苦笑)。

 それから「ゴジラ」は何度も再演されている。そのたび、キャストをシャッフルしたりしてリフレッシュを図り、更には役者の出入りもあって、そして時代に合わせたリライトもあったりして、毎度新鮮な面白味を加えつつ「本家」ゴジラは間歇的に上演され続けてきた。

 そして、2016年。「シン・ゴジラ」合わせ…でもないのだろうが、ゴジラは帰ってきた。松戸さんのゴジラがまた観られる日が来ようとは。てっきりお婆ちゃんが「持て」なくなって小柄な役者に交代したのかと思っていたが、それは失礼な勘違いだったようだ。
 役者に余裕ができたのか、プレゼンターはお婆ちゃんと兼ね役ではなく、しかもふたりになっていた。以前にも兼ね役だったりなかったりはしていたが、ふたりになったのは初めてじゃないかと思う。柳さん相変わらずの体格で相変わらずキレのいい踊り。
 ポスターが景色だけでゴジラがいない。聞けば東宝がうるさくなって使えなくなったのだと言う。それどころか戯曲の再版さえできないのだそうだ。ちょー待てよ。いつから東宝はディズニーになったのだ。ゴジラは封切りから既に60年を過ぎていて著作権はフリーになっているんじゃないとか。…とか楯突く事もなく東宝に礼を尽くすリブレに敬意を表しておこう。

 今回はサンダとガイラが登場。そしてモスラは遂に変態してしまった(あれ?変態したのは初めてじゃなかったか?)。「落ち着くわ~」とか行って東京タワー持ち歩いてるし。モスラのキャラも役者に合わせてか若干の変更があったが、役者の変わらないピグモンの変わりようったら!「今までで一番キュートなピグモン」という前評判に納得した。今までの「おかみさん」然としたピグモンではなく、少なからずおミズっぽい、ちょっと昼間見るにはケバいぐらい鮮やかなピグモンは斬新だった。

 本家の「ゴジラ」は単なる「再演」ではない。日々新たな「ゴジラ」なのだ。

 そんな中で、音だけはちょっと残念な仕上がりだった。いや、恐らく水準は低くない。初めて観た当時のリブレの音が凄過ぎたのだ。劇団内でも音が「最も重要なキャストのひとり」として扱われており、役者達と真剣勝負の間合い勝負をしていた当時のリブレの音は僕の中で既に伝説から神話の域に入りつつある。そんな美化されまくった思い出と比較されてしまう今回の音響さんには気の毒とも思うが、あの頃の「真剣勝負」感に陶酔した記憶はなかなか払拭できるものではない。
 そのうえで、リブレの「ゴジラ」は今回も本物であったし、そして新作でもあった。

 大橋氏は還暦を迎えられたそうだ。5年後、10年後、僕達はまた「本物の」ゴジラを観られるのだろうか。

6/6追記>
 モスラは高橋氏の時に一度羽化していたらしい。やはりデジャヴではなかったか。
 諒子さんがピグモンじゃなかった時もあったというのも、言われて思い出した。なんか彼女はずっとピグモンだったような気がしていた。イメージ馴染み過ぎ?(いやなんかごめん)
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by sompi1 | 2016-06-06 02:17 | レヴュー | Trackback | Comments(0)