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貞子vs伽椰子

 2016年6月20日、昭和町TOHOシネマズ、レイトショーにて。30人ぐらい入ってたかな。

 最初に明言しとくが、二次創作である。なので純粋に「貞子の映画(『リング』シリーズ)」「伽椰子の映画(『呪怨』シリーズ)」として観たら「ちょっと違うぞ」感はあるかも知れない。が、個人的にはその「ちょっと違うぞ」感は本家の後続作品よりはずっと小さいと感じた。

 結果から言えば、突っ込み所は当然あれど、僕はかなり楽しめた。ホラー映画好きなら薦めてもいいかなと思うが、「リング」「呪怨」シリーズに思い入れのある人にはどう見えるのだろう。




 ヒット作のvs企画にはそれなりに制約もある。ちゃんと両方を立てなきゃいけない。観る方もそこらは承知して観る。だから両者の対決に決着なんか求めない。その代わり、イヴェントなれば、物語の決着も必須ではなく「投げっ放しジャーマン」アリだ。監督はそこまでよく心得ていた。
 それにしても、最後のあの姿はやや滑稽過ぎて、あまり見たくなかった半分、これが見られるとはちょっと嬉しい半分の複雑な気分だったな。気になる人は劇場へ(笑)。

 「呪いのヴィデオ」が改版されていた。井戸が映ってない。この意味がちょっと気になる。それでいて予告に出ていた「井戸」のシーンはちゃんと登場するのだ。監督が「井戸」を無視したわけでもない。井戸が意外な形で登場した時にはちょっと笑ってしまった。
 ぶっちゃけ、この監督は「リング」や「呪怨」をあまり観込んでない(少なくとも崇拝的思い入れはない)んじゃないかという感じはした。だからこそ、ここまでばっさりとしたアプローチができたのかも知れない。貞子や伽椰子の「背景」を敢えてかなり無視して「怪獣」として扱ったとパンフにはある。尤も、リングシリーズとは言うが、ちゃんと原作に準拠しているのは1作目だけで「リング2」以降は映画オリジナル(言ってしまえば二次創作、それも決して出来のよくない)なので観る必要もないと思うが。
 僕は「リング」も「呪怨」もシリーズ全作は観てないけれど、それらのどれよりも「ホラー映画として」よくできていたんじゃないかと思う。恐らく「リング」「呪怨」両シリーズのどの監督よりもホラー映画というものを解っていて、そしてある程度心霊現象等のホラーのバックボーンになる事にも興味のある監督なんじゃなかろうか。この監督が撮った過去作は観てみたい気がする。Jホラー界にやっとホラーを作れる人が出てきたかと思った。「リング」の時もそう思ったけど、同じ監督の「リング2」で撤回した。
 これまで観た「リング」「呪怨」シリーズ(合わせて10本ぐらいしか観てないが)の中で、ホラー映画の出来としてこれに張り合えるのは1作目の「リング」だけじゃなかろうか。「呪怨」は乗り遅れてラスト2本しか観てないのだが、正直既に食傷気味で過去作を観たいとさえ思わないし、リングシリーズも「リング2」以降毎回かなりがっかりし続けてきた。「貞子3D」に至ってはホラー映画とモンスター映画の区別もつかんのかと辟易して2作目には足を運ばなかった。だから、この映画はむしろ快哉だった。AVPの時も思ったけど、こうしたイヴェント物の方がオリジナルに敬意を持って接しているようにさえ思えた。
 最後の聖飢魔IIの美しく優しい歌はブチ壊しだった。恐らく「口直し」なのだろう。それなりに恐い映画ができたという自負があるから、エンディングの歌を「救い」にして、恐怖を引きずらずに帰って貰おうという配慮なのかも知れない。悪いが、大きなお世話だった。オブラートは溶けた後が恐いんじゃ!(笑)

 「リング」原作者の鈴木光司氏が世界観設定にちゃんと参加していて(エンドロールには出たがパンフに名前がない!)、二次創作としては「公認」である。そして流れ去るエンドロールで製作の中に江守徹氏の名前を見逃さなかった。

 真横のバカップルが上映中喋るわ、実況ツイートしてるわ(確かめたわけではないがそう見えた)で普通ならブチ切れものなのだが、かなり気を使って(いるつもりで)小声で話していたし、今時のスマートフォンには「映画実況モード」でもあるのか、画面はうっすらと光るだけで煌々とは光らない。なんか、このまま劇場が「お茶の間レンタルヴィデオ」の延長になっていくのではないかと思えてしまった。本当にそうなったら僕は映画館に足を運ばなくなるだろう。
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by sompi1 | 2016-06-21 05:27 | レヴュー | Trackback | Comments(0)