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サド侯爵夫人

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 2/9長野市ネオンホールにて。まつもと演劇祭で上演したものをブラッシュアップ。




 甲府から長野市まではざっと160Km。ツーリング計画では高速道を使っても平均時速50Km/hで計算しなければならないのだが、20時開演のところ17時に甲府を出た。
 車で行くので、梨大演劇部「劇団十三番創庫」のメンバーに便乗者を募った。ひとりで行っても定員いっぱいの5名乗車で行っても高速代は変わらないし、高速だと止まらずに走るので燃料代も殆ど変わらない。1年半前のまつもと演劇祭の時は1日は梨大生4人乗せて、1日はひとりで行ったがガソリン消費量は200円分しか違わなかった。はっきり言って誤差範囲。で、今回は2名の希望者がいたのだが、ひとりは学業の都合でどうしても時間が工面できず、同乗者は1名のみとなった。この1名が実は県立大生(今回のキャストのひとり、荻原氏の後輩)。しかも女子。顔を合わせるのは初めてではないが、これまでは役者と観客なのでほぼ初対面に近い。それで片道160Kmのドライヴにおつきあい戴いてよいものかとちょっと心配したが、元々自力で(電車で)でも行くつもりだったそうなので、まぁ結果お役に立てたわけだ。向うも何度か僕の顔を見て覚えがあったようだし、他の団員からまつもと演劇祭に行った話なんかも聞いていたようで幸いにして「え~、こんなおっさんとふたりっきりは嫌」って展開にはならなかった。尤も、彼女が我慢してただけかも知れないが(汗)。後で聞いたら、お父上は僕より若いんだって。そりゃオトコには見えないか。多少残念ではあるが、それで油断しちゃうならそれはそれでおじさんちょっと心配です(苦笑)。

画像:今年の灯明
 善光寺の門前町では「長野灯明まつり」開催中で、これにタイアップする形で「第三回もんぜんまち劇場」が催され、その一環としてネオンホールの出し物がGodsound+Studioend(愛称ゴッさん)だったわけだ。
 行ってみると大通りは歩行者天国となっており、いつもの駐車場が使えない。そう言えば昨年も灯明まつりでちょっと離れた駐車場に入れたんだっけ、なんて今更思い出したが予め思い出していたとしても結果は同じなのだった。昨年はずっと小さな灯明で、ひとり500円だか千円だかで買った灯明に願い事を書いて並べるというものだったが、今年のはふた回りぐらい大きな灯明が並んでいた。これは昨年のようにお安くはなさそうだ。LEDの普及で灯明もすっかりカラフルになってしまった。何より少々風があっても危なくないのは大きな利点だろう。蝋燭の単色もそれはそれで味があるとは思うのだが、風情のために安全性を犠牲にできないのが現代なのだなぁ。
 駐車場に車を置いて降り立ったのが既に19時過ぎ。ゆっくり晩飯を食っている時間はないので仕方なく7-11でサンドイッチを買ってバス停のベンチ(通行止めなのでバスは通ってない)で味気ない食事。若い女性が一緒だというのに、勿体ない(笑)。

 で、ネオンホール。開演15分前ぐらいに入っただろうか。既に結構な数の客が入っていた。一番前が空いていたのでふたりで陣取った。一番前に知り合いがいるとやり難かったりするのかなぁとか思ったが、この「かぶりつき」の距離感は嫌いじゃない。
 まつもと演劇祭とは場所も違えばキャストも違う。そういった必然の部分も含め、演出にはいろいろ変化があったようだ。三島由紀夫で「笑っちゃう」演出というのも凄い。勿論本筋は変えないし、決して茶化したりしているわけでもない。それどころか当人たちは大真面目に正面から三島に向き合っている。そのうえで、このサーヴィス精神には頭が下がる。
 今回のエポックは、人形を腰に挿して両手を使えるようにした事だろう。「腰に挿す」ったって特殊な装具があるわけではない。持ち手をズボンに挿して腹の前に人形を固定し、腰の動きで人形の動きを作るのだ。当然役者は腰を突き出してはヘコヘコと「イヤらしい」動きをする。この面白さと大真面目な物語の展開が同時進行するのだ。後で聞いた話だが、演出の萩原氏は当初女性陣にだけこれをやらせるつもりだったらしい。しかし今回唯一の男性役者となる彼がひとりだけやらないのはおかしいという事で結局自分もやる破目になったのだそうだ。しかし男には股間に避けがたい障害物がある。実は凄くイタいのを我慢して芝居していたという。見上げた役者魂だが、そこは我慢するとこじゃなく何とかしようよ(苦笑)。
 登場するなり人形が腰に挿さっていて、人形の顔の上に役者の顔がどんとあり、常に両方が見えているというのも面白かった。芝居が盛り上がってくると人形を手に持ち換えて振り回したり高く差し上げたりというこれまで通りのダイナミックな動きが出るのだが、舞台の袖から新しいキャラクタが登場する際には舞台上の全員がいそいそとパンツに人形を挿して何事もなかったように迎える。勿論登場するキャラも同様に腰に挿した状態で出てくるから舞台にはしっかり統一感が保たれるのだが、この「いそいそ」がまた可笑しい。
 メインキャラクタはこの作品のために作った人形だが、召使の少女だけ以前「ラララ☆乱ポン」で使ったリユース人形で、造形が全く違う。身分の違いをとてもよく可視化していた。しかし彼女は一体何をしていたのだろう。バケツからひたすら羽(色つき)を取り出してはあたりに散らかしながら会話していた。何か家事をしている設定なのだろうが、どう見ても掃除をしているというよりは散らかしているようにしか見えない。しかし殺風景な舞台にカラフルな羽が広がっていく様はとてもキレイで「それ掃除と逆だから!」とツッコむ気分にはならなかった。この意味不明なヴィジュアルこそゴッさんの真骨頂のひとつなのだろう。しかもその意味不明な所にやたら力が入っていたりする(笑)。そう言えば昔(まだゴッさんじゃない頃)、松本まで400Kgの園芸用の白い砂を運び込んで、舞台に敷き詰めた事があったっけ。あの時は毎回本番直前に僕が砂をならして紋様を作ったっけ。あれだって特に意味があったわけじゃない。あの時400Kgの砂を搭載した僕の車はまるで車高短だったなぁ(遠い目)。
 そして最後は斎藤氏の大好きな歌うレヴュー。このシンブルな歌が妙に耳に残って、帰りに口ずさんでいる人が何人もいた。途中の爆笑ぶりといい、県外グループなのにこの入りといい、長野の文化の懐の深さを痛感した。尤もゴッさんに関してはネオンホールではもうお馴染みの域で既にアウェイではなく、もしかしたら固定ファンもいるのかも知れない。
画像:カラフルな羽が散った舞台跡
 画像は終演後の舞台。立ってるのは今回のキャストではなく、舞台を観察に上がった観客。まぁ彼女も役者だからいずれゴッさんの舞台に登場しちゃったりするかも知れない。舞台の後の座談会で聞く限り、ゴッさんの舞台を結構気に入ってたようだし。

 舞台の後、客席が片付けられてテーブルが登場、ちょっとした打ち上げになった。ゴッさんの面々は翌日も公演があるのでこのままこの会場に泊まるのだそうだ。「まつもと演劇祭の時はろくに打ち上げができなかったので、あの時の差し入れの酒もここで開けます!」というわけで結構いろんな酒が飛び交っていた。勿論僕はそも酒は飲まないから平気なんだが、酒が好きな人が運転があるからと我慢するのは結構切ないんだろうな。
 すっかり盛り上がってしまい、出発が遅くなってしまって甲府に帰り着いたのは2時過ぎだった。翌日は朝から東京の予定だった彼女にはちょっと申し訳ない事をしたが、観劇自体はよい体験になったようだ。よかった。
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by sompi1 | 2013-02-11 03:53 | レヴュー | Trackback | Comments(0)