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名門トーレンス

 丹沢電気でトーレンスの試聴会があると知り、30年ぶりぐらいに訪ねてみた。




 トーレンスと言えばアナログレコードのターンテーブル、それもベルトドライヴの名門だ。ダイレクトドライヴが世間を席巻してもベルトドライヴひと筋だったトーレンスを僕は肯定する。ベルトにもDDにも長短ある。DDで結果を出せるメーカーはDDを採用すればよいし、ベルトで結果を出せるメーカーはベルトで勝負すればよい。かつてマイクロ精機はDDでは望めないような巨大で強固な軸受で大質量・大慣性モーメントのターンテーブルを回したし、テクニクスは高剛性軸受搭載のDDモータから開発した。
 ぶっちゃけ、空手とキックボクシングはどっちが強いか、ではない。どっちの選手が(その時は)強かったか、それだけの話。

 組み合わされるのはムジークエレクトロニク・ガイザインのアクティヴスピーカ。ムジークという会社は初耳だったが、東独の老舗メーカーでベルリンの壁崩壊後欧米に知られるようになったのだという。ここの、まだカタログにも載っていない最新型(ME806)を鳴らしていた。伝統的に偏心コアキシャルだったのがこの新作ではドームツイータを縦に3個並べているそうだ。ハイパワーに対応するためなのか指向性制御のためなのかまでは読み取れなかった。ウーファ・ツイータそれぞれに専用パワーアンプを搭載したバイアンプ構成だという。バランス入力だったがバランス駆動なのかは聞かなかった。貰った資料にあるかと思ったら、英語で…(汗)。
 勿論トーレンスもハイエンド機(TD550)を持ち込んできていた。145万円のプレーヤにSMEのマグネシウムアーム、オルトフォンのカートリッジがついていた。トーレンスの自社製アームつきモデルもあるのにわざわざそうしないというのが、また(苦笑)。
 僕の風体を見て、そんなハイエンド機を買う客ではないと判断した営業はなかなかのやり手だ。すぐに庶民にも[ちょっと無理すれば]手が届きそうな価格帯のプレーヤ(TD2015/TD309)に切り換えた。一気に価格帯を落としたプレーヤ(それでも25-60万級)もソリッドアクリルのベースだとかガラスのターンテーブルだとか、それなりにこだわりの構造を採用しており、全く同じモータとアーム、カートリッジの2種類のプレーヤから全く異なる音がしたのは確かに興味深かった。しかし、ついてるのはATのオマケカートリッジ。恐らくAT10とかその程度のクラスだろう。数十万円級のプレーヤで聴かせるカートリッジではない。音が違うのは解ったが、どちらも僕の求める音には程遠い。カートリッジがよければもう少しマシに聴こえたかも知れないが、不満なのはそんな部分ではないのでいずれ程遠い事に変わりはなかっただろう。
 十年一日という言葉があるが、30年一日とでも言うのだろうか。懐かしい「高級オーディオ」の音だった。まぁ、それが求められているのなら趣味のモノなれば否定はしないが、僕は30年前からこんな音は要らない。あと、試聴会と言っても実質即売会なんだから、もうちょっと惹きつける「演出」なんてものを考えてくれてもよさそうに思えた。こういうのも「プレゼン」だよね。

 フェルトのターンテーブルシートの音を聴いたのは本当に久しぶりだ。恐らくこれも35年ぶりぐらいだろうか。やや薄手なので分厚いゴムシートのようなぶよぶよ感とまではいかぬものの、どうにもスッキリしない詰まった音。多分、ダンプもされていないガラスターンテーブルにはこういうソフト系の材質を介さないとターンテーブル鳴きがキンキン出てしまうのだろう。もし誰か友人が間違ってこのプレーヤを買ってしまったら、とりあえず僕が数年前に考案した(ホームセンターで材料費数百円の)ターンテーブルシートを薦めるだろう。まぁ、これが買えるくらいの経済力があるならハードシートを薦めてもいいのか(苦笑)。

 この30年、オーディオ界は大きく変化した。オーディオ製品の内容も変化した。しかし、進歩は全くと言っていい程していない。老舗ショップで老舗メーカーの最新の製品を聴いて、確認したのはそんな事か。
 礼を述べて店を後にした。涙が出そうだった。
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by sompi1 | 2013-06-23 22:05 | オーディオ | Trackback | Comments(0)