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翔べない二人2014

 2014年6月21日、桜座にて。
 2009年に観た「翔べない二人」は全く面白くなかった。周囲の先輩達には結構受けていたようなので、あの年齢にならないと解らない機微でもあるのだろうと納得した。
 その「翔べない二人」が再演される。しかも今回は熟年夫婦ver.と若夫婦ver.のWキャストだという。実に興味深い。あの話が若い人でどう描かれるのか、今度こそ僕にも面白い「何か」を見せてくれるのか。




 熟年ver.と両方観られれば一番よかったのだろうが、残念ながら両日とも結構多忙で都合がつかず、どうにか無理繰り融通して若年ver.だけは観る事ができた。
 内容的にはひと組の夫婦の日常を切り出した6つのセグメントからなるオムニバス。一貫してひと組の夫婦の話なのにオムニバスと敢えて言ったのは、各セグメントを違う役者が演じているからだ。作劇的に意味も意義も感じられない。ただ解り難くしているだけだ。自らの楽しみのために芝居を作っている藤谷氏の演出には「観客の都合」は重視されないおたく傾向を感じるので、こうする事に内部的抵抗感はなかったのだと思う。それぞれのセグメントの間に5年とか10年とかの間があるのならまだしも、子供の年頃を見る限り、最後のセグメント以外はせいぜい数ヶ月の間の出来事だ。
 ではどんな意味があるか。思うに出演者を増やす事と、それにより効率的に観客を増やす、という事に尽きている気がする。違う役者を使って違いを楽しむためなら同じ人物を役者を切り替えて描く必要はない。違う人物として描けばいいだけの話だ。最後だけ数年後の設定だとしても、むしろ同じ役者が「変化」して見せる方がずっと説得力がある。

 今回の舞台も、残念ながら「面白さ」という点では前回と大差なかった。ぶっちゃけ、話としてはまるで面白くはなかった。むしろ大部分はかなり不快だった(これも前回同様)。話としては解らぬでもない「ありそうな」話だったが、その中でも特に面白くない部分を切り出されて、なんでわざわざこんな醜態を見せられなければならないのかという思いが先に立った。しかし、僕より若い観客がとても沸いていた。という事は芝居自体の出来の問題ではなく、僕自身の問題なのだろう。そして問題は年齢ではなく、僕が結婚未経験であり、かつ想像力も乏しいために「結婚生活あるある」を楽しめないという事に尽きるのかも知れない。と今回やっと思い至る事ができたのは大きな収穫だったように思う。ただ、ひとりの結婚未経験者の実感として、こんな醜態が夫婦の典型的なありようであるなら結婚などしたくないと思わせる芝居であった事は強調しておくべきだろう。
 そんな中で、最後のふたつのエピソードはところどころちょっと笑わせて貰えた。特に男優に(どちらも個人的にちょっと知っているから贔屓目もあるかも知れない)。僕が知る限り二人とも結婚経験はないと思う。しかし彼らは自分の役を「自分」として受容できていたように思う。見てるだけでも受容できない僕からすれば脱帽ものだ。山本氏の「やられっぷり」(妻の容赦なさも含めて)なんか爽快感すら覚えた。

 ハロー山梨の、というより藤谷清六氏の作る芝居は「ハロー山梨」ブランドで始めた頃からのつきあいだが、着実にクオリティを上げてきている。まさに「継続が力になる」を地でいってる感じだ。しかも、県内の老舗劇団が世代交代に失敗して軒並み低迷している状況下で、ちゃんと定期的に公演するハロ山は、県内の演劇人達に貴重な活動の場を提供しており、事実上県内の演劇文化の屋台骨になっているとさえ思う。
 残念ながら藤谷氏とは「面白い」のツボが全く違う。なので彼が面白いと思うように仕上げられたハロ山の芝居は正直、面白くない。申し訳ないが、芝居の出来とは無関係に好き嫌いの問題だから仕方ない。それでもクオリティアップを重ねてきたおかげで、近年は僕でも「時々ちょっと面白い」までになってきた。これは凄い事だし、喜ばしい事だ。どうせ観るなら面白いものを観たい。僕が観るなら僕に面白いものが嬉しい。しかし現時点ではまだ全体として「面白かった」と思える公演には出会えていない。
 それでもハロ山の芝居を観続けているのは、ひとつには藤谷清六という「人」のファンだから。もうひとつには招待券が送られてきていたから。実は後者は結構重要な要素である。さすがに近年のように2千円もの入場料を設定されてはそうそう毎回つきあい切れない。ハロ山ブランドで演劇活動を始めた頃には藤谷氏は「自分の道楽」という意識が強く、「つきあって戴くのだから時間を割いてくれるだけで充分」という姿勢で無料で公演していた。その時「無料はよくない。5百円お取りなさい」と進言したものだ。無料でチケットを貰っても来ない事があるが、5百円でも出せば大抵は来てくれる、という意味だったのだが、恐らく他から違う進言があったのだろう。たちまちハロ山は2千円の舞台に成り上がってしまっていた。勿論、県内のいろんな才能が集結し、豪華な舞台にはなっている。今回だって幕間のピエロやら生演奏やら、とても贅沢なパーツが随所にちりばめられていた。セグメント毎に役者を替えるなんてのも贅沢の極みだろう。その意味では2千円は「仕方ない」のかも知れないが、観る方は原価が幾らかなんて関係ない。手渡される商品にいかほどの価値があるかだけが問題なのだ。
 今回は招待されなかったので久しぶりに自腹でつきあったが、正直な所、2千円払って観たい舞台かと問われればきっぱり否である。まず人には薦めない。素人なれば自分の好き/嫌いという尺度でしか評価できない自覚はあるので自分が楽しめなかったという理由でこの舞台をダメ呼ばわりするつもりはない。むしろ周囲がよく沸いていて、殆どの観客が楽しめていたという方が正当な「評価」だと思う。楽しめなかった自分を悔いる気持ちの方が強い。
 ハロ山の芝居が今後更に着々と水準を上げてくるのを楽しみに見守りたい気持ちはあるが、毎公演自腹でつきあえるかはちと微妙である。観たい映画を1本我慢してまでと思うと、都度腕組みして迷う事だろう。映画や芝居ぐらい観たいものを観られるぐらい働けよって話なんだが(汗)。
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by sompi1 | 2014-06-23 18:55 | レヴュー | Trackback | Comments(0)